吉田泰之:
吉田酒造店七代目

Ishikawa, Japan

1870年から続く吉田酒造店の七代目、吉田泰之。
霊峰白山のミネラルをたっぷり含んだ百年水と、地元で採れる酒米、金沢酵母を使って、日夜、酒造りに取り組んでいます。
周囲の豊かな自然と伝統的な手仕事を守りながら、新しい日本酒造りを目指し、進化を続ける彼の姿は、AIGLEの物語と呼応します。

MEET -INTERVIEW-

吉田酒造店の酒造りの特徴を教えてください。

石川県白山市はとても自然が豊かな地域です。僕らはその霊峰・白山の自然を表現できるように、地元の米と、霊峰白山から流れる百年水、代々受け継いだ金沢酵母を使って、能登杜氏の伝統の技で醸しています。
酒のベースになるのは、白山に降った雪や雨が地中に浸透して、長い時間をかけて伏流水となった「百年水」です。水の性質が日本ではめずらしい中硬水なので、雪解け水のような凛とした味わいのお酒に仕上げることができます。
酒米は地元の〈五百万石〉〈石川門〉〈百万石乃白〉を使っています。自分たちが蔵の周りの田んぼで育てたものと、地元の農家が育てた米を合わせて使っています。それと代々受け継いできた金沢酵母と、能登杜氏の技。この地域の魅力が詰まったお酒だと思います。

酒造りの面白さは?

酒を通して、白山の自然、白山の冬を表現できることです。酒造りの工程は、大きく分けると、精米し、米を洗い、水に浸けてから蒸し上げます。そこに種麹をふり、麹を作ります。次にお酒のベースとなる酒母を仕込み、3段階に分けて醪を作ります。発酵した醪を酒と酒粕に分けて、濾過、割水、瓶詰めして出荷します。これを30人以上のチームで、秋から春にかけて行います。夏はひたすら蔵のメンテナンスですが、メンテナンスも酒の味を決める大切な工程です。
毎年、同じ種類の米を使い、同じ工程で酒造りをしていても、米を発酵させるのは菌の仕事です。だから、毎回同じには行かないんですね。毎日、発酵の様子を観察しながら、僕らが目指す凛とした味わいになるように微調整していくんですが、それが面白いし、飽きることはありません。
酒はひとつの作品です。表現したいものによって味わいが全く異なります。新作や季節限定の商品に挑戦するときは、まず表現したい自然、季節からイメージを膨らませます。目標とする味に向かって時間をかけて仕込んでいくわけですが、イメージ通りに仕上がり、お客様に喜んでいただく瞬間が酒造りの喜びです。

吉田さんが目指す“凛とした味わい”とはどのようなものでしょうか。

山の麓の蔵の周りも空気が澄んでいるのですが、白山の上の方にいくと酸素がぐっと濃くなるんです。その白山の空気や、冷たく澄んだ雪解け水の味わいを酒で表現したいと思っています。
僕らは白山の恵みで酒を造り、この豊かな自然を表現したいと思っているのですが、温暖化によって、今の自然をいつまで保てるのか、危機感を感じています。白山は元々、冬は雪がたくさん降る地域なのですが、子どもの頃に比べて降雪量が減ってきました。降ってもすぐに溶けてしまう。確実に温暖化が進んでいると実感しています。僕らは冬の寒さのおかげで美味しい酒を造ることができるので、温暖化が進むと酒にも影響が出るんじゃないかと危惧しています。でも、雪が少ない方が暮らしやすいから、住民のみなさんは温暖化を悪いこととは捉えていないんですね。だから、酒の造り手として、環境保全の発信を続けて行かなくてはいけないと思っています。

環境に対して行っている取り組みは?

現代の酒造りは、徹底した温度管理によって、一年中フレッシュで美味しい酒を造ることも可能になりました。その反面、電力消費量の大きい産業になっています。これまで、酒造りが何百年と続いてきたのは、自然のサイクルに合わせてきたから。秋に米を収穫し、外が寒くなったら酒造りをはじめる。春が来たら酒造りをやめて米作りをする。それが最近では、より品質の高いお酒を目指して発酵を管理するために、ほとんどの工程を温度調整した冷蔵室の中で行います。

以前は僕らも高品質な酒造りを目指して、徹底した温度管理の下で、酒造りをしていました。温暖化を実感するようになり、もう一度、自然の摂理に合わせた酒造りに立ち返ろうといろんな取り組みを始めています。フレッシュな味わいをキープしながら、電気使用量を抑えた酒造りを目指して、冬は空調を止めて冷たい外気を取り込んだり、使用電力を再生可能エネルギーに切り替えたり。来年は自社発電も増やす予定です。また、売上の一部を白山市に寄付して、一緒に山の自然を守る活動をしています。

七代目を継ぐ以前に、ヨーロッパで暮らしたそうですが、そこから学んだことは?

大学を卒業し、県外で最新の酒造りを学んだあと、日本酒の輸出業を学ぶためイギリスで一年研修をしました。ブライトンとロンドンに滞在したのですが、家具や食器など代々受け継ぎながら大切に使ったり、伝統文化を守る姿勢に触れて、今あるものを大切にしようと気付かされました。そのとき、ヨーロッパをあちこち旅をしたので、その地域特有の酒文化に触れたのも、新しい視点で日本酒を見るきっかけになったと思います。


AIGLEからはどのようなことを感じますか。

酒造りでは手の感覚はとても大切です。もちろん、計測器も使いますが、米の柔らかさや温度、 水温を瞬時に手で判断して、すぐに次の作業に移らなくちゃいけないこともあります。手の感覚が酒の味を決めるので、蔵のメンバーにも、手で水温がわかるように訓練したり、手の感覚を敏感にしておくことは大事だと伝えています。AIGLEも、170年もの間、クラフトマンシップを受け継ぎ、手仕事を大切にしながら進化をし続けているという点で、僕らの酒造りに近いものがあると感じました。

AIGLEを着用した感想を教えてください。

作りの確かさと上質さに加えて、デザイン性も優れていて、着ていてとても気持ちがいいです。僕らは、毎日、蔵の中で重いものを持ったり、走り回ることが多いんですけど、本当に動きやすくて機能性の高さを感じました。特に、ラバーブーツは本当に素晴らしい。蔵は水仕事が多く、床が濡れていることもあるのですが、AIGLEのブーツは滑らないし、素材が柔らかいのでしゃがんで作業するときも、階段の昇り降りでも、足の負担が少なく、蔵の作業にぴったりです。デザイン性も優れているので、作業をしていても気分がいいし、休みの日に、白山や手取川に家族と出かけるときにも着たいと思います。

もし、AIGLEをイメージしたお酒を作るとしたら?

川のせせらぎとか木漏れ日を感じるような、綺麗で優しいお酒を造りたいと思います。原料は白山の水と酒米、金沢酵母を使い、凛とした味わいをベースにしながら、山廃造りというナチュラルな発酵方法で、自然の優しさを感じる味わいのお酒を造りたいと思います。

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