FRIENDSHIP FARM #3
大島農園 / 栃木県塩谷郡 

1853年の創業から今も変わらずフランスを拠点に、農家のための長靴を生産し続けているAIGLEが「SOIL TOI(ソイル トワ)」-土とあなた- という理念のもと、国内の“土”と共に生きる様々なスタイルをもった農家の方々を紹介します。
大地と共に生きる、地球人として自然と共生する、そんな大きなテーマを考えるときのヒントやきっかけがそこにはあります。

 那須や日光からほど近い栃木県塩谷郡塩谷町の中山間地域で、稲作を中心とした「大島農園」を営んでいる、大島和行さん、幸代さんご夫妻。古代米3種類とササニシキ、インディカ米と日本米を掛け合わせた長粒米を無農薬無施肥で栽培している。
大島和行さんは塩谷町に生まれ。ご両親は兼業農家で、家族が食べる分のお米を栽培していた。幼い頃から美術やデザインが好きで文化服装学園に進学。造園会社、花屋、花・野菜の生産農家で働く。有機農家にて住み込みの研修をした後、7年前に生まれ育った塩谷に戻り、34歳の時に就農した。 

-“自分にあった作物”を見極めるということ

「元々自然や植物が大好きで、環境問題にも興味があり、自給自足をしたかったのですが、インドに一年ほど旅をしていた時の経験は大きなきっかけになりました。」と大島さんは話す。
「インドではヨガを学んだり、マザーテレサの施設でボランティアをしていました。その時に体を形成する食の大切さを身をもって感じました。こうした経験から自給的な営みをしたい、自分の為だけに生きるよりも人の為にも何かをしたいと思い、無農薬で百姓(農業)を始めました。」

「当初は野菜をメインに、お米は家族が食べる分の少ない量から始めました。やっていくうちに野菜よりもお米の方が相性が良いと感じ始めました。」
「野菜の多品目をやっていた時は、ただただ日々の農作業に追われていたのですが、お米をメインにしてからは家族との時間も以前より取ることができ、年間の段取りも計画しやすく、今は理想的な生活ができています。」
「農家を営むうえで“自分にあった作物”を見極めるというのも大事だと思っています。その土地の自然環境や気候、風土といったものに合わせることは当然のことながら、そこには、自分自身や家族も関わっていることなので、土地と、作物と自分にあった農業を探求していった結果、今のかたちになりました。」
「お米はストックできて、味噌など加工品も作れるので、食の土台を自給できている感じはすごくあります。お米や味噌のある安心感と言いますか。」

-田んぼ(稲作)のカレンダーを真ん中にして一年を過ごす

「小さい頃から稲刈りや田植えは手伝っていました。田んぼで家族や親戚みんなでご飯を食べることがすごく楽しかった思い出があります。」
「だから、田植え、収穫は一大イベント、お祭りという感じですね。田んぼ(稲作)のカレンダーを真ん中にして一年を過ごすというか。お米の収穫にとって重要な山場が一年の中でいくつかあるので、気合いを入れて準備しますし、大変だけど毎年それが楽しみです。」
「今は地域や家族で繋がれてきた生活の一部を、自分がやらせていただいているという使命感もあります。」

-未来を創る子供たちに安心安全な食べ物を食べさせたい

“無農薬無施肥“という手間のかかる栽培方法を選んでいる理由について尋ねてみた。
「無農薬でやる意味は環境問題など様々ありますが、未来を創る子供たちに安心安全な食べ物を食べさせたい思いからです。」
「また、施肥に関しては安心安全、人、植物、土、環境や持続可能を考え追求すると無施肥になりました。ただ、無施肥が最高だとは思っていません。その土地に合った栽培方法が一番だと思っています。」

そして「大島農園」の“こだわり”を象徴するオリジナルの加工品が、古代米でつくる“玄米餅”だ。
素朴な食感とやわらかな風味は独特で、“玄米餅”にハマった熱烈なファンが日本全国にたくさんいる。もちろん、僕もその一人(笑)。
本当に無限に食べられるお餅で、 今回は焼きたてのお餅を頂いた。
素敵な器にバター醤油やパクチー、スパイスと塩など様々な調味料と一緒に盛り付けられた。
シンプルなお餅による豪華な食卓にも、大島さんご夫妻の “こだわり”や“大切にしているもの“が垣間見れた。

-稲作をやるってことは、水や山、自然を守るということ

「日々の暮らしでも我が家は素材そのままなもの、遠くの食材よりも近くでつくられた食材を選んでいます。洗剤はなるべく使わずに食器を洗います。妻はほつれたり破れたりした衣類も捨てることなく刺繍で丁寧に蘇らせてくれます。」
のんびり談笑をしていると、「見せたいものがある。」と大島さんから提案が。
車で高原山登山口まで行き、20分ほど山道を歩くと、四方より膨大な湧き水が互いに交差する場所に到着した。
「ここは尚仁沢湧水と言って、十数箇所から湧き出る水が合流する高原山の中腹です。この一帯は樹齢数百年以上の原生林に覆われていて、かなり水量があります。」
「お米をやり始めて、より水を意識するようになりました。これだけ豊富で綺麗な水があるので、僕たちはこの土地でお米を栽培できているんだと日々実感しています。」
「稲作をやっているってことは、水や山、自然を守らなきゃいけないんだなと。」

今後の展望を聞いてみた。
「まだまだ発展途上なので、まずは一生懸命に百姓をやることですね。もっと土地に慣れること、知っていくことをとことんやっていきたいです。」
「それと家族の時間を長くしたいから、百姓をやっている部分も大きいので、妻と二人の娘との時間を確保する。そんな当たり前のことを丁寧にやっていきたいです。」
「最後に、私たちの暮らしや農園を営む中で分かったこと、気づけたことを皆さんに知ってもらうことが、自然環境や食のこと、田舎の暮らしに興味を持つきっかけになればいいなと思います。」

写真・取材記事 :SHOGO

モデル業の傍ら自身でも農地を借り、時間が許す限り作物を育て、収穫し、食す。
農家見習い兼モデル。
IG https://www.instagram.com/shogo_velbed/ 

大島農園

「生きとし生けるものすべてのしあわせを願って」
2017年に大島和行さんと幸代さんが栃木県塩谷町にて大島農園を開園。
自然に寄り添った暮らしをしながら、土地と植物と自分に合った栽培方法で農薬、科学肥料を一切使用せずに野菜とお米を栽培。
夫婦と娘2人と保護した動物たちと暮らしている。
IG www.instagram.com/oshimanaturalfarm/