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神奈川県葉山町 上山口の棚田

神奈川県葉山町東部の山間地帯に広がる、
小規模ながら美しい棚田の風景。
この景色を持続可能なものにするために、
アイスクリームという形で貢献するのが
BEAT ICE〉だ。
その活動の原点には、
農を楽しみ、共生するという想いがあった。

失われつつある
日本の原風景、棚田

 山の斜面や谷間の傾斜地に沿うようにして階段状に作られた棚田。かつて日本の山間部でよく見ることができた水田形態で、日本にある約250万ヘクタールの水田のうち、およそ8%にあたる約22万ヘクタールが棚田だといわれている。ゆるやかな畝の曲線が描き出す風光明媚な景観は、日本の原風景のひとつであり、文学作品などにも多く描かれた。

 葉山町の東部に位置する上山口の棚田の歴史も古く、江戸時代まで遡る。近くにはかつての東海道が通じ、最盛期の昭和30年代には千枚田と呼ばれるほどに栄えた棚田だった。現在でも湧水を最上部の貯水槽に集めてそこから各水田に給水し、葉山牛の牧舎で使った藁から堆肥を作るなど、持続可能な取り組みが評価され、森林文化協会による「にほんの里100選」にも指定されている。

 だが美しいこの景観は、衰退の一途を辿りつつある。傾斜地にあるうえ水田一枚一枚の面積が小さい棚田農業は、通常の稲作以上に労力がかかる。そのため過疎化や高齢化による後継者不足にともない、耕作放棄されているのが現実だ。全国の40%以上の棚田が失われたといわれるなか、上山口の棚田も例外ではなく、現在は約60枚まで減りつつあるという。

棚田米を通して、
この風景の魅力を伝えたい

 そんな葉山の棚田に魅せられ、この風景を守るため活動する夫婦がいる。6年前に東京から移住してきた山口冴希さんと夫の2人だ。「きっかけは、知人の誘いで棚田でのボランティアに参加したことでした。もともと棚田の風景が大好きでしたし、最初はただ楽しかったのですが、急斜面に水田があるからこその大変さや、『手間は2倍で収穫量は1/2』といわれる棚田の稲作の現実を知るにつれ、このままで本当に存続できるの? と感じるようになりました」

 山口さん夫妻が参加する「葉山棚田耕作隊」では、9名のメンバーで16枚の棚田を管理している。独自に試行錯誤を続け、水路の改良をはじめ、竹チップを加えたり、鶏糞や肥料を工夫するなどした土づくりにも積極的だ。

 そうやって週に2回ほど活動し、夫婦2名に割り当てられる米はおよそ30kg。「収穫した30kgのお米を活用して、棚田の魅力や保全の必要性を伝えたいと考えましたが、30kgなんて普通に食べたらあっという間。お裾分けしても少人数にしか伝えることができません。なにかいい方法はないか試行錯誤をするなかで生まれたのが、棚田米の甘酒を原料にしたアイスクリームでした。これなら同じ30kgのお米でも、3,000人に届けることができるのです」

棚田と都市と
人をつなぐ
BEAT ICE

 棚田米から甘酒を作り、その甘酒を原料にした棚田アイスは、“舌鼓を打ち、鼓動が高鳴るアイスクリームを通していろいろな想いを共有したい”という気持ちを込めて〈BEAT ICE〉と命名。卵や乳製品を使わず、甘酒とココナッツミルクを使ってコクを出したヴィーガンアイスで、口に含むと甘酒の風味がほんのり広がるのが特徴だ。

 「アイスの売り上げの一部は、棚田の保全活動に寄付されるようになっている」という取り組みとおいしさが支持され、地元の名産品を扱うショップや、地域の小学校の給食、町のふるさと納税の返礼品としても扱われるようになった。

 そんな〈BEAT ICE〉の理念や活動内容に共鳴したAIGLEでは、農作業用のラバーブーツやウエアの提供や、クラウドファンディングの支援を通して彼らの活動をバックアップしている。

 「AIGLEのアイテムは機能的なのにデザイン性も高く、さすが農業をルーツに持つブランドだと感じます。好きな服を着て作業すると気分が違うので、作業効率も上がっているような気がします」

 活動をスタートして今年で3年。AIGLEとの関わりをはじめ、さまざまな出会いがあり、棚田の魅力を広めたいという〈BEAT ICE〉の願いが少しずつ形になっているのを感じるという。「全国の棚田米を使った『棚田アイスシリーズ』をプロデュースしたり、〈三州三河みりん〉とコラボレートして世界に向けて発信するヴィーガンアイスクリームブランド〈DEN+EN ICE CREAM〉を立ち上げるなど、活動の幅も少しずつ広がってきました」

棚田米から作った甘酒を原料にした棚田アイス。卵や乳製品を使わず、甘酒とココナッツミルクを使ってコクを出したヴィーガンアイスで、口に含むと甘酒の風味がほんのり広がるのが特徴。

www.beatice.jp

農業の未来のためにできること

 “棚田と都市、棚田と人を繋ぐ”をコンセプトに、これからの時代の農業や環境保全のあり方を提案する〈BEAT ICE〉の活動。彼らの「棚田から笑顔や喜びを発信して、より多くの人に棚田の魅力を知ってもらいたい」というスタンスは、1853年のブランド創立時から「自然に寄り添いながら、豊かに楽しむ暮らし」を提案してきたAIGLEと通じる部分も多い。

 「〈BEAT ICE〉とAIGLEは、ジャンルも規模も違いますが、共有したい価値観や思いは同じだと感じる」と話す山口さん。「私たちがやっている活動は小さいけれど、同じ想いがあれば規模など関係なくつながることができる時代だと実感しています。都市で生活していると消費者側になりがちですが、少し意識を変えるだけで支援する側や作る側にまわることができるはず。それによって芽生える感情や行動こそが、豊かな経験になるし、農業の未来を守ることにつながるのではないかと思います」

  • photography : Yuichiro NODA
  • hair & make up : Ikuko SHINDO(SHISEIDO)
  • models : Luka, SOTARO YASUNAGA
  • art direction : Daisuke KANO
  • text : Hitomi MIYAO
  • edit : Mami OKAMOTO
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