01 more treesの森 高知県梼原町

1853年の創業以来、
常に自然と寄り添う暮らしを提案してきたAIGLE。
2007年から「都市と森をつなぐ」をコンセプトに
“森づくり”をするmore trees。
豊かな森と水源に恵まれた高知県梼原町の
「more treesの森」から見えてくる、
それぞれの「自然との共生」のこと。

「more treesの森」の原点

音楽家・坂本龍一さんが代表を務めるmore treesは、2007年の発足以来、地域と協働で森林保全を行う一般社団法人。事務局長の水谷伸吉さんに「more treesの森」プロジェクトが始まった理由を聞くと「世界的に加速する森林破壊と地球温暖化の危機的状況に行動を起こすためです。一方、日本においては戦後、木材が不足し、成長の早い杉やヒノキが全国的に植えられ、こうした人工林が森林の27%を占めるようになってしまった。私たちは国内では主に間伐と、樹種が偏ってしまった森を多様性のある森に戻していく活動をしています」。今では国内外17か所にある「more treesの森」。今回紹介する高知県 梼原町（ゆすはらちょう）は、このプロジェクトの第一号として選ばれた“森づくり”のルーツとなる地だ。

木と水ともに生きる、ちいさな町

高知県は森林率が84%。全国で一番高く、行政としても森と向き合う姿勢が根付いている県だ。中でも梼原町は、森林が91%を占める四万十川の源流域。標高が高く、眼下に雲海を望めることから「雲の上の町」とも呼ばれている。豊かな森と水源の恵みを受け、林業はもちろん、環境産業、風水力発電や太陽光発電など自然エネルギーへの取り組みが盛んで、環境モデル都市にも認定されている。「地元の住人の皆さんも環境問題への意識が高く、自発的に活動しています。木とともに生きていくという、森への信仰心ともいえる気持ちが強い町ですね」。とは、町役場の立道 斉さん。まさにAIGLEの新しいコンセプト「LIVE WITH NATURE」を体現している町なのだ。

森林と共存する、隈研吾さんの建築

木材資源の循環に力を入れ、それをまちづくりにも活かしている梼原町。実はこの小さな町には、建築家・隈研吾さんが設計した町役場「梼原町総合庁舎」や「雲の上のホテル」、「雲の上の図書館」など、地元の木材を使用した美しい木造建築物が点在している。いまや世界的に有名な隈研吾さんの木造建築。実は、氏がそれを手がけるようになったきっかけは、古い木造の芝居小屋「ゆすはら座」に感銘を受けたからなのだという。現在では町に6つある隈研吾建築。木々を借景としたモダン建築と自然の調和は本当に美しく、まるで町全体がミュージアムのよう。この建築を目当てに観光客も多く訪れ、地域の活性化に一役買っている。

自然とともに活性化する未来へ

地域ぐるみで「自然とともに暮らす」ことを実践する町の景観は、隈研吾建築とランドスケープの美しさに呼応するように整備され、町の中心地では電柱が地中化されている。また、さらに町を活性化させるため、空き家を活用した住宅支援や子育て支援など、先進的な移住促進活動も行っている。そして今年の春には、more treesのサポートによる「多様性のある森作り」もスタート。杉やヒノキに偏ってしまった森に様々な樹種を混在させることで、より自然に近い強い森を作ろうという、未来を見据えた取り組みだ。「梼原町」の地名の由来でありながら、幻の木と言われているほど自生数が減ってしまった「梼（ユス）」の木も植えられた。ユスは成長が遅く、立派な木に成長するには50年以上かかると言われているが、植えられたユスの木は、数十年後には、より豊かな森となったこの町のシンボルになっているに違いない。

「都市と人をつなぐ」
そのためにできること

1853年から「自然に寄り添いながら、豊かに楽しむ暮らし」を提案してきたAIGLE。ブランドとして環境や社会に配慮した取り組みを広げるため、「都市と森をつなぐ」ための活動を続けるmore treesとの協働がスタートした。これまで森林保全活動のためのラバーブーツやウエアの提供、また、more treesから派生したmore trees designのプロダクトのノベルティ採用や、木材を使ったワークショップなどを行ってきた。今回はより踏み込んだ形で、より多くの人にmore treesの理念を知ってもらいたいという思いから、チャリティTシャツを製作。このTシャツを通して、人々がこのプロジェクトのことを知り、森や自然に寄り添う一歩になってほしいという願いが込められている。