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国内外18の地域で森づくりを展開し、地域との協働で森林保全を行うmore trees
昨年「more treesの森」プロジェクトがスタートした奈良県 天川村は、
村の面積の4分の1が、吉野熊野国立公園に指定されている、自然豊かな村だ。
森づくりに邁進する地元のかたがたと、
それを支えるmore treesの事務局長 水谷伸吉さんに
村を案内してもらった。

  • Photographs : Takeshi Miyamoto
  • Art Direction : Daisuke Kano
  • Edit & Text : Mami Okamoto

世界遺産、大峯山に抱かれた
修験道発祥の地

 天川村は、紀伊半島の中央部に位置する雄大な自然に抱かれた村。およそ1300年前に開かれた修験道発祥の地であり、今も多くの修験者が修行に訪れる。悠然とそびえる霊峰「大峯山」、さらに、能楽の草創期から存在し音楽と芸能の神様として崇められる「天河大辨財天社」。その他、さまざまな文化遺産が継承されてきた、神秘的な秘境だ。2004年には、ユネスコ世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」として登録された。

 また、ここは新宮川水系熊野川の最源流域にあり、美しい水源にも恵まれている。地域の湧水は「ごろごろ水」という愛称で親しまれ「名水百選」にも選ばれているほど。

 いにしえから山岳や自然に畏敬の念を抱き、守り続けてきた「人々」も、この村の魅力のひとつだ。古くから修行をする旅人を迎え続けてきた歴史からか、村の人々は懐が深く、現在でも旅人を温かいおもてなしの心で迎えてくれる。この村に来れば、文化遺産や山岳を大切に守り守られて暮らす村の人たちの豊かさを感じられるはずだ。

more treesとともに
森林・林業の活性化を目指す

 そんな天川村で昨年、国内16番目となる「more treesの森」プロジェクトがスタートした。この村の97%は森林で、かつては林業が盛んだったが、他の多くの自治体と同じように、継承者不足や針葉樹の放置林などの問題を抱えていた。かつて300400人いたという林業従事者も、今では20人程度。それでも、管理する面積は変わらない。

 さまざまな問題を抱えた自治体に寄り添い、森づくりを通じて地域を活性化するのがmore treesの重要な仕事だ。事務局長の水谷さんを中心としたメンバーたちは「都市と森をつなぐ」を理念に、協賛する企業などの協力を得て、植林や間伐などの森林保全活動を行なっている。

「ここ数年は広葉樹を中心とした『多様性のある森づくり』を目指しています。今回の天川村のケースでは、皆伐(樹木を全て伐採)された人工林伐採跡地に、新たに広葉樹を植林するという試み。そして将来的には、それを特産品に活用するという考えがあること。また、従来の林業とは違う、オルタナティブな林業に挑戦するという理念が合致して、マッチング開始から2ヶ月で連携協定に至りました」と水谷さんは語る。

 スギやヒノキの名産地であるこの地域において、新たに広葉樹を植樹することは、かつてない試みといえる。そんな経緯で、天川村とmore treesによる新しい「多様性のある森づくり」がスタートした。

伝統文化の継承のため
キハダを植林する

 天川村の名産品には、1300年前から続く伝統的な名薬「陀羅尼助丸」がある。原料は広葉樹であるキハダの樹皮だ。

「『陀羅尼助丸』は、修験道の開祖、役小角(えんのおづぬ)が作った苦味健胃薬。観光客が集まる洞川温泉街では、あちらこちらで購入することができます。名産品でありながら、昨今では原料となるキハダが不足し、県外から仕入れている状況。なので、将来、地元産の原料で『陀羅尼助丸』を作れるようにしたいと、キハダを中心とした広葉樹の植林を決めたんです」と、村の人たちは口を揃える。村の名産品を作るということは、林業に携わる人だけでなく、観光業、製造業の人たちにとっても大きなメリットがあり、伝統的な地場産業の活性化につながると期待されている。

 村全体の明るい未来を見据え、昨年の秋から今年の春にかけて、約2ヘクタールの土地に1000本を超える樹木の苗を植林した。洞川財産区のメンバーをはじめ、森林組合、林業従事者、兼業する若者、さまざまな人の手を借りた大仕事だ。もちろん、シカなどによる食害防止のために、植えた苗木の周りを獣害対策ネットで囲うなど、順調に育つよう「人の手による」工夫が凝らされている。

 今回、植えられたキハダの収穫までは、約20年の年月を要する。

「自分たちの代では、キハダの収穫まで見届けられるかわからないけれど、村の子どもたちが、この森づくりを間近で見て、それを守り、継承していってほしい」。これが、村の人々のいちばんの願いだ。

天川村とmore treesが見つめる未来

 天川村では、その他にも「森の力」を活かすべく、さまざまな活動に取り組んでいる。キハダを中心に、同じく名物の朴の葉寿司に使うホオノキ、アロマオイルを抽出できるクロモジなど、付加価値の高い木を育林したり、キハダを使ったお茶やハンドクリームの開発など、新しい名産品を作る試みにも積極的だ。

 AIGLEは、森林保全を通じて地域活性化を行うmore treesの理念に共感し、支援を続けている。「AIGLE for more trees」チャリティコレクションの展開に加え、森林保全に携わる人たちへのアイテムの提供も引き続き行っていく予定だ。

 また、環境省国立公園オフィシャルパートナーとなり、商品や自然体験の提供、その他の支援を通じて、国立公園の保全や利用促進を進めている。まずは、今回発売するTシャツを通じて、自然や森への思いを馳せて欲しい。

※このTシャツの売上の8%は、一般社団法人 more treesへ寄付されます。

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