国内外 20 の地域で森づくりを展開し、地域との協働で森林保全を行う more trees。
2009 年より「more trees の森」プロジェクトがスタートした北海道美幌町では
その広大な大地に根ざした「多様性のある森づくり」を進めている。
森づくりに邁進する地元のかたがた、そして、
それを支えるmore treesのスタッフとともに、町を訪れた。
北海道の北東部、オホーツク海から約30km内陸に広がる美幌町。町が誇る景勝地、美幌峠からは、日本最大のカルデラ湖、屈斜路湖が眼下に広がる。かつて、アイヌの人々が暮らす集落があった、北海道ならではの大自然に囲まれた美しい地域だ。町名の由来は「水多く、大いなるところ」を意味するアイヌ語「ピ・ポロ」。その名の通り、美幌川をはじめ60本を超える美しい川が流れ、面積の6割を森林が占める。
2005年、美幌町では、そのゆたかな森林資源を町の財産として守るため、FSC森林認証を北海道で2番目に取得。以降、環境的にも、経済的にも持続可能な森づくりに取り組んでいる。
また、新エネルギーの取り組みにも積極的で、バイオディーゼル燃料、太陽光発電、ペレットストーブの導入など、CO2を削減する「低炭素な町づくり」を推進する、森林未来都市の先駆け的存在として知られる町だ。
エコロジーなスローライフが叶うと、地方移住希望者からも注目されている美幌町。「自然に寄りそう」未来を見据えた、最先端のくらしがここにはある。
美幌町における「more treesの森」プロジェクトがスタートしたのは、2009年のこと。これまでカラマツがメインであった森の伐採跡地に、シラカバやミズナラ、ハンノキなどを植林し、より自然に近い森へとシフトチェンジ。more treesが提唱する「多様性のある森づくり」を協働で進めている。
美幌町が目指すのは、環境的にも経済的にも持続可能な森づくりを推進すること。例えば、地元の木材を積極的に活用し「地域社会を発展させる」こともそのひとつだ。例えば、2015年にできた、こどもたちが遊べる施設「きてらす」は、遊具やアスレチックまですべて美幌産のFSC認証木材を使用している。
また、植林用の苗木を小学校で育てるという取り組みもスタート。「多様性のある森づくり」は、数十年単位の時間を要する、世代を超えたプロジェクト。次世代を担う子どもたちに、木を身近に感じてもらうことは重要なことのひとつなのだ。
美幌町は、農業もさかんだ。清らかな水と肥沃な土地が広がり、気候条件にも恵まれている。主な生産物は、小麦やてん菜、じゃがいも、玉ねぎなど、大地の力強さを感じられる農作物。特産品を使った加工食品なども数多く展開している。
名産品のひとつであるグリーンアスパラは、しっかりとした肉質と甘さが魅力。4月上旬ごろから翌年の1月ごろまで、およそ9ヶ月にわたって収穫が行われるが、ほとんどが地元で消費されてしまうため、ふるさと納税の返礼品などのほかでは味わえない、幻の逸品だ。
農にルーツを持つAIGLEは、1853年の創業以来、天然ゴム製のラバーブーツをハンドメイドで作り続けてきた歴史がある。現在も「LIVE WITH NATURE」のコンセプトのもと、農業や林業など、自然のフィールドに寄りそい、また、土で繋がるさまざまな人びとのくらしに寄りそいたいと願っている。ブランドとして、環境に配慮したアイテム製作はもちろん、循環型社会を実現するための支援を、これからも続けていく。
more treesが目指す「都市と森をつなぐ」を、全国に先駆け理想的な形で実現している美幌町。more treesの発起人である坂本龍一さんが、2019年に植林したシラカバの苗木も、美幌の森づくりに呼応するように、すくすくと成長している。
惜しまれながら、今年3月に亡くなった坂本龍一さんは、音楽活動の傍ら、各地域の「more treesの森」へも足を運んでいたという。「現地へ赴き、地域の人々に寄りそい、肩肘張らずに皆さんとお酒を飲んだりしていました。地域の皆さんもとても喜んでくださって、より前向きに森づくりに取り組んでいけていたと思います」とは、事務局長の水谷伸吉さん。坂本さんが目指した「人と森林が共存する社会」は、これからもmore treesの起点となり、たくさんの人の手によって継続し、広がり続けていくことだろう。
AIGLEは、そんなmore treesの理念に共感し、チャリティコレクションによる、ささやかな支援を続けていく。2020年から続くこのコレクションが、よりよい未来の一歩になるよう、また、一人でも多くの人が、自然と共生することを考えるきっかけになるように願いながら。