AIGLEがまちと自然をつなぎ、
寄りそう暮らしを提案するコンセプト「LIVE WITH NATURE」。
その一環としてAIGLEは、札幌国際芸術祭2024 (SIAF2024)に協賛し、
“自然に寄りそう”ライフスタイルブランドならではの方法で、イベントをサポートします。

ここでは、特にその作品やライフスタイルに共感を覚えた参加アーティスト、
国松希根太さんの 「自然とともに生きる」を体現した日常や
その制作風景をお届けします。

Photographs : Takeshi Miyamoto
Art Direction : Daisuke Kano
Edit & Text : Mami Okamoto

 

 
 

 

北海道 白老町を拠点にするアーティスト、
国松希根太さんの日常

 北海道の南西部に位置する白老町は、東に苫小牧市、西に登別市。南は太平洋に面する、ゆたかな自然に囲まれた町。国松希根太さんは、この町の小さな集落、飛生地区を拠点にするアーティスト。「飛生アートコミュニティー」の代表でもあります。廃校を活用したこの施設は、赤い屋根の木造校舎が昔のままの趣で佇む、のどかな場所。国松さんは、広い旧体育館をアトリエとして使っています。
 また、彼は制作活動の傍ら、長年放置されていた校舎裏の森づくりを続けるなど“自然に寄りそう”暮らしを実践するアーティストでもあります。そんな国松さんが参加する札幌国際芸術祭2024では「アートを通して100年後の未来を見つめる」をテーマにした展示を行います。
 北海道の小さな町に根ざした国松さんの日常を感じるため、そして「未来」と地続きにある町の「過去」や「現在」を感じるために、彼のアトリエを訪ねました。

複雑な地景が織りなす
神秘的な自然

 ゆたかな自然に囲まれた白老町。周辺にはさまざまな景勝地があり、真円に近いカルデラ湖 俱多楽湖、切り立った断崖がそびえるアヨロ海岸など、大地の力強さを感じさせる神秘的な風景に目を奪われます。
 国松さんはこのゆたかな自然のなか「アヨロラボラトリー」という活動の一環としてフィールドワークを行っているといいます。
「アヨロとは、今はもう地名としては残っていない、かつて白老と登別の境界域にあった地域の名前です。このエリアを中心に歩き、見て、話を聞き、作品として表現することが活動の目的です。記録するために写真を撮りますが、それをそのまま作品にするということはせず『そこに自分が小さくなって立ったらどんな風景が見えるのか』など、出会った景色に、記憶と想像を交えて制作しています。登山道などの整備された道以外の場所や川を歩くことも多いため、AIGLEのラバーブーツや防水性の高いアウターで身を守ることで積極的に前に進んでいける感覚になります」
 アヨロには「あの世への入り口」という意味をもつ洞窟「アフンルパㇿ」、「神様の尻もち跡」という意味の海岸の窪み「オソルコッ」など、アイヌの言い伝えがあるそうです。その昔、アイヌの人たちもこの景色から想像を広げ、神話を残したのでしょうか。この複雑な地景には、人びとの想像力をかきたてる見えないちからがあるのかもしれません。

 

 
 

 
 

樹齢600年の
巨木の息吹を感じる

 こうしたフィールドワークを行う中で、札幌国際芸術祭2024の作品づくりのため、国松さんは道内を巡り、巨木を探しました。今回の作品は、朽ちかけた丸太からつくられた彫刻。直径1メートル以上の大きな丸太をチェーンソーやナタ、ノミ、ヤスリなどで削った作品です。テーマは「WORMHOLE」。虫喰い穴の意味であり、2つの時空をつなぐ概念でもあるのだそう。
「実際に作品には、朽ちかけた木のテクスチャーや虫喰い穴も見つけることができます。昔、金属を使った作品を作っていた頃は、スケッチを描いて模型を作ってというプロセスを踏んでいましたが、木は作っている過程で、木の方に自分を合わせていく、変化させていくのが面白いところです」
 そのインスピレーションのひとつになったという巨木は、白老地区、ポロトの森にある樹齢600年ほどのハリギリの木。真ん中には、大きな洞窟状のウロがあり、焼け焦げた跡があります。
「ここで、何百年も同じ場所に立ち続け、朽ちてはまた再生してきた木です。そんな巨木の姿から『時間』を感じて、この先の未来を想像してみてほしいですね」。
 国松さんが朽ちかけた丸太に向き合い、語り合いながら、新たな命を吹き込んでいきます。

 

 

 

 

小さな町のゆたかな大自然を
アート作品にして広げる

 実は国松さんは幼い頃、飛生に住んでいたことがあるのだといいます。
「僕は基本的には札幌育ちで、飛生には小学生の頃、2年ほどしか住んでいませんでした。子どもの頃は、この土地をきちんと見ていなくて、その魅力が本当にわかったのは、大人になってからです。地名の由来や、飛生ってどんな土地だったのだろうというのが、だんだん気になってきたんです」
 2002年、飛生を拠点にし、以来、フィールドワークを続ける国松さん。「歩くたびに発見がある」という地景の魅力は尽きることがないといいます。
「現在は、北海道で制作するということに意味があると思っています。ここで作ったものを外へ発信すること、伝えていくことが、自分の役目かなと思っているんです」
 国松さんは、東京をはじめとする全国での個展に加え、フランスのサヴォア邸での合同展など、海外でも活躍しています。北海道の小さな集落に根ざすアーティストが、その土地から吸収した力を自身のフィルターを通し作品としてグローバルに発信していく。そんな「まちと自然をつなぐ」ようなクリエイションは、1853年のブランド創立時から「自然に寄りそいながら、豊かに楽しむ暮らし」を提案してきたAIGLEにも通じる部分があります。AIGLEは、ファッションとアート、自然が共生し、より身近に感じられるような未来をサポートしたいと考えています。

 

 

 

札幌から世界へ
アートを発信するということ

 札幌市内6会場を中心に、10ヶ国以上、約80組のアーティストの作品を展示する札幌国際芸術祭2024。初の冬開催となる今回は、北国の冬ならではの屋外イベントや、市民参加型プロジェクトなども多数企画されています。AIGLEも、モエレ沼公園でのブーツの貸し出しなど、屋外でのイベントをサポート。国松さんの作品が展示される「未来劇場(東1丁目劇場施設)」には、国内外のアーティストによる、100年後を見つめるための表現が集まります。
「今回展示するのは、自分が普段外を歩いたりして感じていることを表現した作品です。見る人には、作品を見て欲しいというよりは、木と対峙した瞬間の空間を感じてほしい。舞台上での展示なので、よくある展覧会とは照明や天井の高さなども違いますし、これまでにない形の展示になると思います」。
 札幌国際芸術祭という大規模なアートイベントのなかで、国松さんの日常を切り取った作品は、見る人の目にどのように映るのでしょうか。飛生の自然の息吹をダイレクトに感じられる作品。見る人が、少しでもその背景を感じ、自然を身近に感じるきっかけになれば、と願っています。

Kineta Kunimatsu / 国松希根太

1977年、北海道生まれ。飛生アートコミュニティー代表。多摩美術大学美術学部彫刻科を卒業後、2002年より飛生アートコミュニティーを拠点に制作活動を行う。近年は、地平線や水平線、山脈などの風景の中に存在する輪郭(境界)を題材に彫刻や絵画、インスタレーションなどの作品を制作している。また、アヨロラボラトリーの活動としてアヨロと呼ばれる地域を中心に土地のフィールドワークを続ける。札幌国際芸術祭2024では、未来劇場(東1丁目劇場施設)にて作品を展示予定。
https://kinetakunimatsu.com

札幌国際芸術祭 SIAF2024

札幌国際芸術祭(Sapporo International Art Festival 略称:SIAF)は3年に一度、札幌で世界の最新アート作品に出合える、特別なアートイベント。札幌市内のさまざまな場所で多彩な作品展示やプログラムを繰り広げる。今回は「LAST SNOW」をテーマに、小川秀明ディレクター(アルスエレクトロニカ・フューチャーラボ共同代表/アーティスト)のもと、2024年1月20日~2月25日に開催。
https://2024.siaf.jp