今回のチャリティコレクションのグラフィティを手がけた、イラストレーターの冨樫鮎美さんと、小さなリトグラフ工房を営む近藤もえさん。パリに暮らす日本人女性の日常に、自然に寄りそうフランスのライフスタイルを垣間見る。
2003年にパリに渡り、ファッションの仕事をしていた冨樫鮎美さん。勤務先のブランドで、イラストがプリント柄として採用されるなど評価され、念願だったイラストレーターとしての道を進むことになったという経歴の持ち主だ。
彼女が住むのはパリ18区。元工場だった建物を、ゼロから自分たちの手でリノベーション。建材は基本的に廃材やデッドストックを用い、家具も新しいものは買わず、中古のものを選んでいるのだという。また、彼女はパートナーの出身地であるノルマンディにも拠点を作るべく、所有する土地に木を植え庭づくりをしている。南アルプスの山々に囲まれた、山梨県で育った彼女にとって、自然は身近なものだ。
今回のTシャツのグラフィティは、彼女自身が慣れ親しんだ花や植物をモチーフに、AIGLEとmore treesの世界観を表現。彼女らしい、優しく柔らかい雰囲気と強さを併せ持つデザインは、パリのエコロジーな暮らしの中から生まれたものだ。
パリ10区でリトグラフ工房を営む、近藤もえさんとパートナーのマルタン。石版印刷とも呼ばれ、ほとんどの工程が手仕事で行われるリトグラフは、元の原画を人が描き写し、1枚1枚製版して作られている。
元々、大きなリトグラフ工房で働いていたマルタンと、ファッションに携わっていた近藤さん。量産するのではなく、手仕事の温もりが感じられる昔ながらの製法で、アーティストに寄り添った仕事がしたいという思いが、リトグラフ工房を立ち上げたきっかけだ。アトリエにあるのは、100年以上使われてきたプレス機と、手入れをすれば何十年も使える石板。印刷に使うインクは、基本的にリネンオイルをベースにしたものだが、よりエコロジーにすべく、一部使用している石油由来の成分を、オレンジの皮を使ったものなどへシフトしていきたいという。
古いものを大切にしながら、新たなものを生み出す仕事。大変な作業だが、丁寧な手仕事で伝えたいという思いが二人を支えている。
冨樫さんと近藤さん。二人のライフスタイルに共通しているのは、古いものを大切にすること、そして手仕事の温もりを大切にすること。パリという大都会を拠点にしながら、自然の声に耳を傾け、ナチュラルに暮らしていることも共通点だ。
自然が身近にあるフランスでは、彼女たちのようにエコロジーに配慮することが、ごくごく当たり前のことになってきている。大切なのは、過剰に消費をしないこと。ゴミを出さないようにすること。また、なるべく環境に配慮したプロダクトを選ぶこと。意識を少し変え、できることから始めてみたい。
フランス発のAIGLEでも、近年、エコフレンドリーな商品開発を積極的に進めている。今回のチャリティコレクションのTシャツも、オーガニック素材を使用。その他のプロダクトも、リサイクル素材の商品の展開など環境に優しい選択肢を、農にルーツを持つブランドとして提案していく。
Profile
Ayumi Togashi / 冨樫鮎美
イラストレーター。山梨県甲府市生まれ。2003年よりパリ在住。スタジオベルソーでファッションを学び、ファッションブランド勤務を経てイラストレーターに。フランスの大手ファッションブランドや百貨店など、幅広く作品を提供している。
https://agentandartists.com/artists/ayumi-togashi/
Moe Kondo / 近藤もえ
パリのファッションスクールで学び、ブランド勤務を経て、2021年、パートナーのマルタンさんとともに、リトグラフ工房「LE GARAGE」を立ち上げる。現在は、子育てをしながら、夫婦でアトリエを運営している。
https://www.legaragelitho.com/