THYLACINE : ミュージシャン
Paris,FRANCE
フランスのミュージシャン、ウィリアム・レゼ。
「Thylacine」という名で親しまれている彼は、ソーラーパネルつきのキャラバンで作曲するのが好きだという、ユニークなアーティスト。
彼が大切にしているのは、創作の過程や生涯学び続けること。
まちと自然の両方からインスピレーションを受けながらクリエイションを行う彼のスタイルは、AIGLEの物語と呼応します。
「タイラシン」は絶滅した動物ですが、なぜこの名前を選んだのですか?
かつては狩りの対象で、いまはもう存在しない動物の名前を使いたかったんです。聞こえのいい記号のような名前をつくるのではなく、タイラシンという動物に第二の人生を与えるのもいいのではないか、と。
作曲への熱意はどこからくるのですか?
6歳のときにサックスを習い始め、19歳で作曲を始めたときに、すべてを再発見したような気がしました。その後、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ドライヴ』を観たときに気づいたんです。自分は、音楽のパワーを伝えられるような作曲家になりたかったんだと。映画の音楽が衝撃を与えてくれましたね。
SOUND BY THYLACINE
ラバーブーツ工場内の音をサンプリング(録音)し、その音を細かく加工・編集。
特に冒頭では、機械から出る音や裁断音など、工場で録音された音が多用されているよう。
工場の音は、主にリズムにあたる部分で使用され、メロディは電子楽器で表現されています。
エレクトロニックミュージックが好きな理由は?
クラブ文化にはあまり染まっていませんが、エレクトロニックミュージックをつくり始めたのは、作曲するときに自由を感じられたからでした。
同じ場所で3曲以上作曲することはないそうですが、それはなぜですか?
あるとき、コンサートの合間に乗る電車の中よりも、スタジオの中にいる方が自分の創造力が乏しいことに気づきました。それに、同じ場所で3曲もつくると、インスピレーションが枯渇してしまうんです。作曲と革新を行うためには、移動する必要があるんだな、と。この気づきが、世界最長の列車であるシベリア鉄道に乗るというアイデアをぼくに与えてくれました。
シベリア鉄道の旅は、あなたにとってどのような意味を持ちますか?
この旅のおかげで、2015年にリリースしたファーストアルバム『Transsiberian』が生まれました。シベリア鉄道の文学的なインスピレーションを、現代的かつ電子的な方法で再解釈したかったんです。
移動式のキャラバンスタジオを所有し、旅をしながら作曲をされているそうですね。そのアイデアはどこからきたのでしょうか?
シベリアから帰ってきたとき、旅は楽しいけれど、限界があることに気づいたんです。列車内ではヘッドホンで作業をして、疲れるような周囲の雑音に囲まれていました。列車では、別の場所に行きたくても、一方向への移動を強いられます。 この限界を超えたいと思ったときに、1972年製のとても丈夫なキャラバンに出会ったんです。音響技師と一緒に、完璧なプロ用スタジオを目指してキャラバンを改造しました。屋根にはソーラーパネルが設置されているので、どこでも作曲ができるんです。人里離れた場所に3、4日滞在して音楽制作をすることも可能ですよ。家とスタジオが一緒になっていて、それと一緒に旅ができるなんて最高です。
理想の旅とは?
キャラバンで、南米やアルゼンチン、チリ、北半球のフェロー諸島を旅しましたが、他の大陸を見てみたいと思っています。このキャラバンを連れて旅に出るのが楽しみです。
自然の中に身を置くか、都会と接するか、どちらが必要だと感じますか?
ぼくにとって、パリのような都会的な場所は欠かせません。クリエイティブな雰囲気がありますし、離れたくありません。同時に、移動可能なスタジオをつくったということは、自然からインスピレーションを受けることであり、あらゆるものから自分を切り離すことでもあります。誰にも邪魔されずに創作できる環境は、アーティストにとってとても大切です。まちと自然のバランスをとることが、人生のゴールですね。
音楽の持つ力とは何だと思いますか?
音楽はぼくを元気にしてくれます。「解毒剤」という名前の曲をつくったこともあるほどです。音楽は、日々の解毒剤なんです。
あなたにとって、AIGLEとは?
AIGLEは、サステナビリティの象徴だと思います。ぼくのキャラバンは、ときに修理をしながらどこまででも一緒に行けるのでとても信頼していますが、AIGLEも同じです。耐久性があって長く愛用できるので、信頼感があるんです。
AIGLEを表現した音楽を作曲するとしたら、どんな楽器を選びますか?
楽器というより、「ゴム(ラバー)」を選ぶと思います。ゴムとブーツに関して、驚くべきテクニックとイノベーションを開発したAIGLEだからこそです。